正しい充電方法を教えてください
 
 
 
●解説に入る前に基本的な事をお話しします。

充電というのは大変危険な事である
という事を認識してください。電気エネルギーの移動を行う訳ですから、きちんとした知識と準備、機材が必要です。もし誤った方法で充電を行うと機器の損傷、最悪火災や怪我の原因になりかねません。間違っても放充電中にお出かけ、放充電をセットしたまま寝る、これらの行為は絶対やってはいけません、自殺行為です。通電する物(水や鉄)を充電器の近くに置かない事なども常識です。みなさん守っていますか?

この項に関しては皆さんに正しくバッテリーを管理して頂くために
文章は厳しめに書きます。

さて、「危険だからやんない」では話が進みませんので、正しい放充電の知識をみなさんにつけて頂きましょう。


●そもそも充電と放電て何よ

電動ガンは一般的にニッカド電池が使われています。このニッカド電池の特徴として大電流の放充電が可能という事があげられます。パワフルにギアを回すという用途に適していますね。このニッカド電池は使い捨ての一次電池と違い、二次電池と呼ばれ、電気エネルギーのチャージが可能な便利な電池です。充電というのはこの電池にエネルギーをチャージする行為を指します。対してチャージされたエネルギーを消費する事を放電と呼びます。

●ニッカド電池の特徴

便利なニッカド電池ですが、中途半端に消費した電池を再びフルチャージするためには一度規定量の放電を行わなければならないという面倒な特性もあります、もしこれを怠るとメモリー効果と呼ばれる現象が発生する可能性があります。

●メモリー効果

200ccのコップに水を満タンに入れました、80cc飲みました。ここで再び満タンにしました。あと何cc飲めますか?答えは200ccと考えるのが普通なのですが、ニッカド電池の常識はそれを許しません。満タンの筈なのにコップの中身の飲める水は80ccしか無いという事が起こる可能性があります。これをメモリー効果と言います。

●放電?

上記メモリー効果を防ぐ手段は「残っている水はいったん捨てる」のです。その後再び満タンにしてください。このいったん捨てる事を簡単に行う道具があります。放電器です。この放電ですが、ナメている方が多い事に驚きました。
※ちょっと例えに語弊があるので補足します。放電とは「電池の中のエネルギーを使い切る」という事ではありません。モーターが回らなくなるまで、ライトを繋いで消えるまで、これらは過放電といいます。


Aさん
「あー?メンドイからいつも寝る前にマルイの充電器挿してから寝るよー、起きる頃にはバッチシって訳よ」
Bさん 「放電放電ってうるせーからさー、一応やっとこうと思ってねー、会社行く前に放電器にサクっと挿しといたよ、帰ってきたらバッチリランプ消えてるし、これで充電すりゃーいいんだろ?」

お前ら逝ってよしです。


まずAさんの問題点を見てみます。
この人は放電をしていません。ニッカド電池内に充分なエネルギーがチャージされていない可能性大です。
次に充電をしたまま寝ています。火災保険には入っていますか、火災になった場合の原因は本人の重過失です。てゆうか生命保険もですねこの場合。

Bさんの方が問題です。
この人は家を空けています、もはや問題外、 Out of the question 。さらに過放電です。
放電器の役割を考えてみてください。言い方を変えれば「電気を無駄に浪費させる道具」です。物理の基本的な話ですが、エネルギーはタダでは消えてくれません。熱、音、光等に変換して消費しなければいけません。ボタン1つでエネルギーが消えてくれるならダイエットする人はいません。放電器はエネルギーを熱に変換するとてもアブナイ道具です。放置してはいけません。過放電と言いましたが、オートカット機能付き放電器であれば問題ありません(放置して良いという意味ではありませんよ)。ちなみにマルイ純正の放電器にオートカットの機能はありません。


●マルイ純正放電器、取り扱い上の注意


オートカット機能の無い放電器ですので、放電適正値で放電をやめさせなければいけません。つまりランプが消えると同時にバッテリーを外すという事です。オートカット機能付きの放電器は適正値に達すると自動的に放電をやめます。1セルあたり1Vになったところが適正値ですので8.4Vバッテリーは7Vで放電完了という事になります。9.6Vバッテリーや12Vバッテリーをマルイ純正放電器で放電する事は危険です。放電器の異常加熱が起きる可能性があります。また8.4Vを超えるバッテリーで放電を行うと過放電になります。あくまで8.4V用放電器は8.4Vバッテリー専用だという事を守ってください。

●いよいよ充電

放電が完了したらいざ充電開始です。

左がラージバッテリー用充電器、右がミニバッテリー用充電器です。
放電器同様に充電器も8.4V専用です。対応しないバッテリーを接続するのは正しく充電できないばかりか、事故のもととなります。マルイ純正充電器には必ず8.4Vバッテリーのみ使用してください。

さて、 ここに記載されている標準充電時間6〜7時間というのはあくまでマルイ純正バッテリーでの値です。マルイ純正バッテリーのスペックはラージが8.4V1300mA、ミニが8.4V600mAです。もっと性能の良いラジコン用バッテリーや大容量非純正バッテリーを使用している方が殆どかと思いますので6〜7時間では充電が完了しません。例えば8.4V2000mAのバッテリーを左の充電器で充電すると何時間かかるでしょうか。1300mAで6〜7時間ですから2000mAだとおおよそ10時間かかる計算です。ミニバッテリーに関しては私の知る限り社外品同サイズで500mA〜600mAの物しか存在しませんので純正同様6〜7時間で満充電となります。しつこいようですが、くれぐれも寝ながら充電はやめて下さい。事故に対応できませんよ。

お疲れ様でした、充電完了です。

●えれえ面倒くせえし、やたら時間かかるなぁおい

以上でマルイ純正放電器、マルイ純正充電器による正しい放充電の方法がわかりました。やってられるかバカヤロウと思いましたね?私もそう思います。そこで超便利アイテム全自動急速放充電器を紹介します。
 

ガンスミスの2人が愛用している放充電器は下記2機種です。

1.ヨコモ YZ-114 A/D 価格:約15000円 (永井愛用)
2.Z-Shot Fuzzy Logic Computer Charger 価格:約21000円 (小野寺愛用)

手元に2.が無いので 1.について詳しく書きます。てゆうかその名の通り全自動なんであまり書くことが無いのですが。

●中途半端に使用した電池が最初の操作だけでフルチャージ状態へ

これぞ全自動の醍醐味、ニッカド電池の面倒な放電→充電を1.2Vバッテリー〜16.8Vバッテリーまで自動認識して適正値で放電し、そののち急速充電を行い、満充電を感知するとブザーで充電完了を教えてくれます。 つまり何もせんでいいという事です。しかし、コイツが何をやっているかくらいは最低理解しときましょう。

●自動放電機能搭載
接続されたバッテリーの種別を判別して自動的に最適な放電を行います。専用の放電器を用意する必要がありません。

●デルタピークカット方式採用
満充電検出方式の1つにデルタピーク値の監視というのがあります。これは満充電の直前に電圧が急に降下する電池の特性を利用したもので、デルタピークセンサーの許容値を超えた場合に充電流をカットするというものです。このほかに温度上昇率監視方式(デルタTCO)等があります。この機能のおかげで充電の完了を正確に知ることが出来ます。

●サイクル充電機能搭載
放電→トリクル充電→急速充電 この動作を3回連続で行います。何でこんな変な事をするのかというと、長期間未使用だったバッテリーや新品のバッテリーは内部が活性化されていません、これに気合いを入れてやるのです。要するに慣らし運転のようなものです。新車のオイルを最初は頻繁に交換するという考え方に似ていますね。

●4桁ディスプレイ搭載
現在のバッテリーの状態や充電器の状態を知る事が出来ます。

●電流調整ボリューム搭載
最小0.2A〜最大5.5Aまでのボリュームを搭載しています。電池やその目的に応じた最適な充電の調整が可能です。

 
●実際に使ってみる
@YZ−114A/D 電源ON     Aバッテリーをセットする。
 
Bボタンを2回押して放電→充電モードへ。 写真は見づらいが、Dischargeランプが点灯している
    C14分経過、放電完了、1分間のトリクルチャージへ移行。Trickleランプが点灯している
D15分経過、急速充電開始、電流は3.0A(1.5C)にセット。 Fast Chargeランプが点灯している
    E47分経過、充電完了。1521mA入った。まぁまぁかな。 ランプは再びTrickleへ。
 

●Trickleって何?
Trickle充電(トリクル)とは小さい電流でゆっくりと充電する事です(逆→急速充電)。マルイ純正充電器は別名トリクルチャージャーと言います。バッテリーを痛める事はそうありませんが、充電にとても時間がかかります。

●どれくらいの電流で充電すればいいのよ
ニッカドバッテリーの充電は1C〜3Cとされています。1Cとは例えば600mAのバッテリーならば0.6A、1300mAのバッテリーは1.3A、2400mAなら2.4Aです。2Cはその倍、600mA→1.2A、1300mA→2.6A、2400mA→4.8A。3Cは(以下略)。ニッカドに3Cを超えるアンペアをかけないで下さい。危険です。

例:
ミニバッテリー8.4V 600mA マルイ純正やSANYOセルのEXTRA CHARGEタイプ 0.6A(1C)までを推奨
ミニバッテリー8.4V 500mA SYSTEMA製等の
FAST CHARGEタイプ 1.0A(2C)までを推奨
ラージバッテリー 8.4V 1300mA マルイ純正等 2.0A (1.5C)までを推奨
ラージバッテリー 8.4V 1800mA 2.7A (1.5C)までを推奨
ラージバッテリー 8.4V 2000mA 3.0A (1.5C)までを推奨
ラージバッテリー 8.4V 1700mA SCセル 3.4A(2C)までを推奨
ラージバッテリー 8.4V 1800mA SCセル 3.6A(2C)までを推奨
ラージバッテリー 8.4V 2400mA SCセル 4.8A(2C)までを推奨

電圧は8.4Vと書かれていますが、9.6Vや10.8V,12V等も同様です。 その他のバッテリーはこの例を元に推察してください。あくまで例なのでこの前後で結構ですし、急いでいる場合は3Cまでなら可です。(ミニバッテリーは除く)4Cでも充電できますが、バッテリーを傷めます。

●セルって何よ
8.4Vバッテリーは最初から8.4Vのバッテリーでは無く、1.2Vバッテリーを7こ(7セル)連結させて作られています。1.2×7=8.4という訳です。もうお分かりでしょうが、9.6Vバッテリーは8セル、12Vバッテリーは10セルの連結です。当然ですが、連結させるセルは同種の物でないといけません。さらにバッテリー職人から厳密に言わせると、「特性も揃える必要があり、性能を出すためには1セル1セル、厳密にチェックして似た特性の物を選別する必要がある」だそうです。私は電動ガンにそこまでする必要があるのか疑問に感じますが最低でも8.4Vをバラして1セル追加して9.6Vにしたいという場合、同時期に買った同一メーカー、同一使用頻の物に限定してもらっています。

●バッテリーを保管しときたい時は満充電?放電状態?
ニッカド電池は自己放電をあまりしませんが、放電保管が基本です。なぜかと言うと電池が劣化するからです。最悪な保存方法は高温多湿な場所に満充電状態で長期保存する事です。次回充電時に容量が減っています。また電池の保管時には金属の箱に入れたりしないで下さい。理由はもうお分かりですよね。

●ニッケル水素電池ってどうなのよ
ニッケル水素電池はニッカドと比較すると内部抵抗が大きく大電流を取り出しにくいので、電動ガン向きかどうか疑問が残る物です。ただ同一サイズで容量が約3倍もあるので長時間使用に向いています。以下にニッカドとニッケル水素の比較を書きます。

ニッカド ニッケル水素
内部抵抗が低いので大電流が取り出しやすい 内部抵抗が高いので大電流が取り出しにくい
容量が小さい。 容量が大きい
メモリー効果が顕著 メモリー効果があまり起きない。
  過充電・過放電に弱い。
放電保管 放電保管の必要はない
  放充電とも低温に弱い
  高温では自己放電が顕著
  ニッカドより自己放電しやすい
  最適な充電・放電方法が明確になっていない
急速充電は1C〜3C 急速充電は1Cまで

ちょっと扱い辛い電池ですね、ですが、この価格の安さと容量は魅力です。私はデジカメ用に12本ほど保有しています。またE.S.Fでは無線の電池としても利用されています。
 
●今後の注目電池
私が最も注目している次世代電池は携帯電話等に利用されているリチウムイオン電池です。1セルで3.6Vという電圧の高さとニッケル水素よりも高いエネルギー密度、小型軽量、メモリー効果無し、さらに高寿命、しかも安全設計であるという、至れり尽くせりのまさに夢の電池です。ただ、この電池を制御するには制御回路(IC)が必要で、バッテリーパックにこれを内蔵させるとコストが半端では無くなります。ですから普通のニッカド/ニッケル水素用バッテリチャージャーでは充電出来ません。この電池の歴史はまだ浅く、1990年にSONYがはじめて製品化に成功したばかりです。さらなる研究で高性能化と低価格化を実現した製品の登場に期待しましょう。

現実的な話ではニッケル水素電池の性能向上がコストの面で有利かと考えられます。ホビー用途バッテリーでは最先端技術が常に投入され続けるラジコンの世界ではSCバッテリーというのが主流になりつつあります。SCバッテリーはニッカドなら2400mA、ニッケル水素ならばなんと3300mAという大容量を実現しながら、内部抵抗値は従来のニッカド並となっています。しかもセルのサイズも単2電池より小さいので電動ガン用8.4Vバッテリーとしてすぐに利用可能です。ただしかなり高価ですので覚悟してください。普通の人は普及価格帯へ落ちてくるまで気長に待ちましょう。所詮用途は電動ガンなのですからお金は他の部分へ回した方がいいでしょう?